虚構に生きる

高二中二小二のあの頃の気持ちに戻ろうというコンセプトなのです。

今の私よりもあの頃の彼は大人だった

むかし付き合った男がいる。

思春期だった私にとっては二十と数年生きた彼はひどく大人に見えたのだ。

彼に何度か告白をしてやっとOKを貰った。

彼は何度もこう言った。

「自分は君が思っているような立派な大人じゃない。」

それでも好きなものは好きなの。

「君は年上に憧れているだけだよ」

でも好きなの。

 「君は恋に恋をしているだけだ」

 

恋人と別れたばかりの彼に何度も言い寄って、私ならずっと一緒にいてあげる、私なら貴方の為に尽くしてあげるとバツの悪そうな顔に向かって何度も愛らしき言葉を送った。

次の恋人ができるまでのお試しで良いと伝えて、彼はやっと折れたのだ。

でもすぐに別れてしまって。

彼が私に慣れるにつれて見せる表情や仕草が、私が思い描いていた大人とはかけ離れていて、何だか彼のことが今度はひどく子供じみて見えたのだ。

私はその時折見える子供らしさに深く失望をして、一度そう見えてしまうともうダメで、かじかんだ手でコーヒーカップを両手で持って飲む仕草や、はたまたいただきますの挨拶にさえ、ああ、あの時の気持ちで表現するならガキっぽいと思った。

 

 

社会経験を数年積んだ私はあの頃の彼と同じような局面を迎えていた。

あの時の私と同じような頃合いの男の子。彼は化粧で厚く着飾った顔を見て綺麗だと言う。何だか面白い。男子達は二十歳を越えたらババアだと言っていたのに、この子は好意を伝えてくる。

彼はやはり歳の割には大人であったように思う。

彼の言う通りわたしは大人に憧れていたのだ。